激増する「不起訴理由は不明」という報道 これを放置していいのか?

  1. オリジナル記事

◆「不起訴理由は不明」の記事例を見てほしい

以下の表は、朝日新聞の記事データベースを使って、不起訴理由がわからないと明記されたものをピックアップした結果である。期間は2022年4月1日から8月31日まで。検索キーワードは新聞横断検索の場合と同様の4語句「地検」「不起訴」「理由」「明らかにしていない」を用いた。

事件の容疑者が複数おり、1つの記事で起訴と不起訴に分かれているものなどは一覧表から外した。綿密な調査研究ではなく、あくまで傾向をざっくり把握するためのものだということを念頭に置きながら、並んだ見出し(地方版含む)を眺めてほしい。

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◆見えてきた4つの重要ポイント

いかがだろうか。大雑把な内容を知るための表ではあるが、いくつかの重要なポイントは見えてくる。整理すると、「不起訴理由が不明」の記事には次のような傾向がある。

① 凶悪事件(殺人、強盗、放火、強姦)でも不起訴理由が不明のものが結構ある

② 警察官や教職員などの公務員、マスコミ関係者が目立つ

③ 地方版での掲載が多い

④ 文字数は100文字前後という「ベタ記事」が多い

凶悪事件が多かったり(①)、公務員やマスコミ関係者の記事が目立ったり(②)するのは、逮捕段階での記事が多いためだ。地方版の記事が多い(③)のは、そもそも当初からニュースバリューが低いと判断され、初報が地方版にしか掲載されていないためと思われる。

ただ、報道機関が「地方版ネタ」と考えたとしても、殺人などの凶悪事件の不起訴理由が“謎”のままでよいのだろうか。それも1件や2件というレベルではない。しかも、ほとんどのケースでは、第一報段階では容疑者の実名が報道されている。

普通、起訴・不起訴の記事は「容疑者逮捕」「摘発」の続報だ。少年事件などを除き、報道機関は容疑者の実名を報じる。したがって、不起訴を伝える記事は、容疑者の名誉回復という意味も持つ。逮捕時に実名をさらされ、その後、「嫌疑なし」で不起訴になったのに、その事実が報じられないとしたら、当人の名誉回復もなかなかできないだろう。

そのため、報道各社は社内のガイドラインで「不起訴処分と発表されても、嫌疑はあるのか、あるいは嫌疑がないか不十分なのかなどを取材し、記事に反映させなければならない」(朝日新聞社「事件の取材と報道 2018」)などと定めている。

「嫌疑なし」と「起訴猶予」には天と地ほどの差がある。これら不起訴の種類すら報道できないのであれば、報道機関はその義務を果たしているといえるのかどうか。

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高田昌幸
 

ジャーナリスト、東京都市大学メディア情報学部教授(調査報道論)。

1960年生まれ。北海道新聞、高知新聞で記者を通算30年。北海道新聞時代の2004年、北海道警察の裏金問題取材で取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞などを受賞。

 
 
   
 

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