激増する「不起訴理由は不明」という報道 これを放置していいのか?

  1. オリジナル記事

◆取材網・取材力が減退する一方の報道機関

熊本地検の場合、次席検事は週2回、庁舎内で記者と対応する。次席検事に直接質問できる貴重な取材機会であるにもかかわらず、その場に現れない社も珍しくないそうだ。とくに全国メディアの支局記者にその傾向が強いという。

全国メディアは、地方支局の取材記者をどんどん減らしている。記者数人で県政や市政、事件事故、教育、文化、経済などをフルカバーし、広い県下を走り回るケースも少なくない。不起訴の理由を明らかにしない検察に対して粘り強く取材をかける体力は、とくに地方においては相当に失われている。

検察は「なぜ不起訴か」を開示する法的義務を負っていない。報道機関に不起訴理由を説明していた過去の振る舞いは、言ってしまえば、「便宜供与」「行政サービス」の枠内だったにすぎない。報道機関側はその枠組みの上であぐらをかき、不起訴理由を公開させる制度を作り上げることができなかった。

もの言わぬ姿勢を強める検察、取材力の劣化で基本的事実さえ把握できなくなってきた報道機関。その狭間で、「嫌疑なし」(事実上の無実)と「起訴猶予」(犯罪行為は認められる)の区別すら不明の“謎の不起訴”は今後も増え続けるだろう。

 

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高田昌幸
 

ジャーナリスト、東京都市大学メディア情報学部教授(調査報道論)。

1960年生まれ。北海道新聞、高知新聞で記者を通算30年。北海道新聞時代の2004年、北海道警察の裏金問題取材で取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞などを受賞。

 
 
   
 

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