裏金1564万円受領の杉田水脈・自民党衆院議員を検察審査会へ申し立て/不起訴は許されない!と上脇博之・神戸学院大教授

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自民党安倍派(清和政策研究会)のパーティー券収入からキックバックを受け取っていながら、その事実を政治資金収支報告書に記載していなかった裏金事件に関連し、政治資金規正法罪(不記載)で不起訴処分が下されたのは不当だとして、衆議院議員の杉田水脈氏(中国比例)とその関係者の計6人が8月26日、東京検察審査会に審査を申し立てられた。杉田氏側は総額1564万円の裏金を受け取っていたとして刑事告発されたが、東京地検特捜部は今年7月、杉田氏本人ら5人を嫌疑不十分で不起訴処分とし、秘書1人については起訴猶予としていた。

申立人は神戸学院大学の上脇博之教授。

検察審査会は有権者から選ばれた市民11人で構成されており、検察が不起訴とした判断が適切だったかどうかを審査する。「起訴相当(起訴すべき事件である)」か「不起訴不当(さらに詳しく捜査すべきである)」の議決が出た場合、検察は事件を再検討しなければならない。

杉田水脈氏のHPから

◆杉田氏の裏金、額は上位

杉田氏の事件は、杉田氏の国会議員関係政治団体で資金管理団体の「杉田水脈なでしこの会」が、2018年以降の5年間で1564万円のキックバックを安倍派から受け取っていたというもの。杉田氏川はその事実を政治資金収支報告書に記載せず、一連の裏金事件の捜査終了後の1月31日に収支報告書を訂正した。

この不記載が政治資金規正法違反に当たるとして今年4月、上脇教授が刑事告発していたが、7月8日東京地検は杉田氏本人や会計責任者ら6人全員を起訴しなかった。

自民党は今年2月、内部調査の結果として、衆参両院で85人が派閥からの還流金(キックバック)を政治資金収支報告書に記載していなかった事実を公表した。裏金になった金額は総額で約5億7000万円に上る。このうち杉田氏の1564万円は12番目に多い。

◆杉田水脈議員とは? “保守派”“差別発言”

杉田氏は、2012年の総選挙で日本維新の会公認候補として兵庫6区から立候補。選挙区では当選できなかったものの、比例近畿ブロックで復活し、初当選した。2014年には次世代の党の公認候補として再選を目指したが落選。2017年の総選挙では自民党公認候補として比例中国ブロックで当選し、2021年の選挙でも連続当選している。2022年8月には総務大臣政務官に任命されたが、過去の発言などが問題視され12月に辞任した。

杉田氏は、保守派の政治家として知られ、過去にはLGBTQの人への差別発言、朝鮮人やアイヌなどの被差別の人への差別発言などが問題視され、物議を醸してきた。

「日本の名誉と尊厳を守るため、美しい伝統と文化を誇るため…全力で取り組んでまいります」と謳い上げる杉田氏(本人のHPから)

◆秘書は「起訴猶予=犯罪の事実はあり」で起訴されず

今回の審査申し立てでは、杉田氏のほか「なでしこの会」の会計責任者、事務担当者が嫌疑不十分となっているが、東京地検特捜部の判断で不起訴(嫌疑不十分)となった。その理由を検察は明らかにしていない。また、秘書については、犯罪に関与したことは証拠上明白なのに検察の判断で起訴猶予処分となった。検察は、この理由も明らかにしていない。

上脇教授は、過去に例のない大規模な裏金事件に関して、秘書や会計責任者などの事務担当者だけの独断でできる犯罪ではなく、議員の指示や了承なしには実行できないとして、杉田氏本人も含め「起訴相当」の議決を求めている。

◆「秘書は勝手に動けない。議員本人も起訴して事実解明を」と上脇氏

上脇教授は次のように語っている。

「5月に審査申立てした萩生田光一議員の秘書のケースも、検察は“起訴猶予”だった。杉田議員の秘書が会計責任者でもないのに“起訴猶予”だったことは重大。通常、秘書は議員の意向に基づき、あるいは議員と連絡を取り合って行動する。派閥からキックバックされた寄附金を管理する秘書が、それを不記載にしていたからには、議員の意向があったはず。秘書が勝手に不記載にはできない。ですから、東京検察審査会には“起訴猶予”だった秘書だけではなく、秘書に指示をした杉田議員も“起訴すべき”と議決してほしい」

鈴木祐太
 

ジャーナリスト。

地方の理系大学に在学中から、被差別部落・ベトナム難民などの在日外国人の子どもたちへの支援に関わる。

小学校臨時教員、派遣社員などを経て、ネットを中心としたメディアに関わり、「政治とカネ」「子どもの貧困」などの社会問題を中心に記事を発表してい...

 
 
   
 

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