北海道庁首脳への100万円 なぜ書かなかったか? 「権力監視型の調査報道とは」【5】

  1. How To 調査報道

◆「取材を諦める? まだ粘る?」 その分岐点はどこに?

 質問 当然、事実に突き当たることもあると思うんですが、諦めることもあったと思います。百発百中ではないと思う。諦める「めど」があるとすれば、どういうところですか。

 高田 もちろん書けなかったテーマ、ネタはたくさんあるわけです。

 例えば、高知新聞ある企業の不正を追っていたときのことです。金の変な流れがどうもありそうだ、となった。で、その金の流れを知っている内部の社員が当然いるわけですよ。キーパーソンとして。誰が金の流れを知っているか、まずそれを特定しないといけない。その人に社外で会ったり、夜に自宅を訪ねたりしながら、いろいろ説得を試みるわけですよね。で、最終的には「帳簿を見ることができないか」と持ち掛ける。当然、なぜそれが必要かを説明します。それによって、どんなことをただしたいのか、それも説明する。全身全霊で説得するわけすね。人間力です、そこは。

 でも、何回もやっても結局らちが明かない。そういうとき、元職を当たります。以前にお金を扱っていたポストにいた人を探し出す。でも、その人もなかなかうまくいかない。経理関係の物がない以上はしようがないので、変な所にお金が流れたんじゃないか、というのはその時点で諦めました。

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高田昌幸
 

ジャーナリスト、東京都市大学メディア情報学部教授(調査報道論)。

1960年生まれ。北海道新聞、高知新聞で記者を通算30年。北海道新聞時代の2004年、北海道警察の裏金問題取材で取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞などを受賞。

 
 
   
 

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