なぜ取材プロセスを可視化するのか? 「権力監視型の調査報道とは」【6】

  1. How To 調査報道

◆取材のプロセスを見せることが重要

 高田 話は飛びますけれども、私は、調査報道だけではなく、これからの報道で一番大事なことのひとつは、取材のプロセスを読者に見せることだと思っています。いままでは、何か神様のように、上の方からニュースがおりてきて、それが客観中立であるかのように書いていた。例えば「政府は何日○○○○の方針を固めた」という書き方が何となく客観中立であるかのようなイメージとイコールになっていたのではないか。

 では、「政府が何日、○○○○の方針を固めた」という記事について、その取材のプロセスを明らかにすれば、どうなってしまうか。私は東京で官邸取材をしたこともあるので、分かるのですが、イメージとしてはこうです。

 「首相官邸の××××秘書官は、何日夜、首相官邸の番記者5人を集めて、赤坂のイタメシ屋でワインを振る舞いながら、『これこれのやつはもう君らは書いていいよ』と述べた。この会合の会費は1人5,000円だった」とか。で、「記者は全員、その話を承ったものの、質問はしなかった」とか。それが取材のプロセスじゃないですか。こうやって取材のプロセスを明示していくと、この記事は客観中立というよりも、政府要人の言い分を一方的に伝えている記事だな、ということが見えてしまう。取材はすべて、コミュニケーションの結果なんですね。そのコミュニケーションそのものを見せていく。

 身も蓋もないかもしれないですけれども、そのプロセスをきちんと開示して、きちんと見せる。そのプロセスも含めて信頼性を得ることが大事なんじゃないかと思っています。記事の品質が本当に確かなら、取材プロセスも確かなはずです。それを見せることが、客観性の担保じゃないか、と。

調査報道のために集めた資料

◆内部告発者を徹底して守る。取材プロセスを可視化する。その両立を

 高田 それなのに現状は、「朝日の看板の下にぶら下がっている記事だから信用しろ」とか、「高知新聞だから信用しろ」とか、そういう感じです。ただ、そういうふうに思っているのは、報道機関側だけであって、市民はもう、そんなブランドだけで記事の良し悪しを判断なんかしていません。もちろん、今でも大手メディアのブランド力はあるし、もっとブランド力を高めなければいけないんだけれども、取材・報道の構造やプロセスが読者に見えなければ、戦前と同じだと僕は思っているんです。

 「多くのメディアが報道している」から、「多くの権威あるメディアが報道している」から、だからみんな、信用しちゃった。大本営を信用しちゃった。あれは大本営を信用したのではなくて、大本営を報じるメディアのブランドを信用したんだ、と僕は思っているんです。

 それと同じ構造を現代においても、読者との間で築いていいのか。では、それに関して何ができるのかといったら、取材のプロセスを極力明らかにする。そのかわり、内部告発的な人は徹底的に守る。「政府は何日、○○○○の方針を固めた」という記事はやめて、「菅官房長官は何日夜、官房長官の番記者5人を相手に、『もうおまえら書いていいぞ』と述べた」という形の記事を出す。「書いていいぞ」と官房長官が言った、それがコミュニケーションです。必要なのは、そんな記事だと思う。これだと思う。それを読者がどう受けとめるかですよ。

 冗談じゃなくて、僕は本当にそう思っている。

1

2

3
高田昌幸
 

ジャーナリスト、東京都市大学メディア情報学部教授(調査報道論)。

1960年生まれ。北海道新聞、高知新聞で記者を通算30年。北海道新聞時代の2004年、北海道警察の裏金問題取材で取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞などを受賞。

 
 
   
 

関連記事