なぜ取材プロセスを可視化するのか? 「権力監視型の調査報道とは」【6】

  1. How To 調査報道

◆調査報道と取材プロセスの可視化

 高田 調査報道が比較的価値あるかのように読まれる理由の1つは(調査報道の記事では、全てじゃないですけれども)、何となく取材のプロセスが見えるからなんですよ。開示請求をしてこういう資料が出てきたとか、取材のプロセスが見えるじゃないですか。単純に「毎日新聞の取材でわかった」だけではなくて、「読売新聞が何日、これこれの開示請求をして得た資料によると」とか書いてあるんじゃないですか。それはプロセスが少し見えているんですよ。それをもっと見せてやることです。

 事件報道でそれをやってみたらどうかと思って、以前、頭の体操をやっていたことがあります。「札幌中央署は何日、××××容疑者を逮捕したと発表した。広報担当の山田太郎副署長によると、逮捕容疑は△△△△△した疑い。でも、北海道新聞は、警察サイド以外にこの事実を裏づける情報は持っていない」。発表どおり書きました、と書いちゃうわけです。だって、それが実際の取材のプロセスだったら、そう書くのが正しい。

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 さっきも言いましたが、本当は「関係者」という語句を用いて記事をつくるのは、内部告発的な人を別にして、基本的にだめだと思います。読者には「関係者」って誰なのか、わからないです。だから、「関係者」がなぜ匿名を希望しているかをどこかに書いておく。外国のメディアなどはそうじゃないですか。なぜ彼は匿名を希望しているかをちゃんと書く、それが必要だと思うんですね。本分中に書きにくかったら、原稿の末尾の注釈でもいいかもしれない。書ける範囲で、関係者がどういう立場の人かをちゃんと書いていなければいけない。

 「関係者」って誰なんだ、というのを突き詰めて表現していないから、取材も甘くなるんですよ。「ああ、じゃあ関係者、にしておきますか」みたいな。そんなことを続けていると、甘い取材が横行し、結果として取材力の劣化は続くだろうと思います。

=終わり

<第1回>調査報道は端緒がすべて それを実例から見る 「権力監視型の調査報道とは」
<第2回>「まず記録の入手を  誰がその重要資料を持っているのか?」
<第3回>「“ネタ元”ゼロで始まる深掘り取材 そのときに武器となるのは?」
<第4回>「政治の不正は政治部で、警察の不正は警察担当でガチンコ勝負を」

■参考
単行本『権力vs.調査報道』(高田昌幸・小黒純著、旬報社)
単行本『権力に迫る「調査報道」』(高田昌幸・大西祐資・松島佳子著、旬報社)

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高田昌幸
 

ジャーナリスト、東京都市大学メディア情報学部教授(調査報道論)。

1960年生まれ。北海道新聞、高知新聞で記者を通算30年。北海道新聞時代の2004年、北海道警察の裏金問題取材で取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞などを受賞。

 
 
   
 

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