【資料】岸田文雄首相の「祝う会」不起訴に関する審査申立書/広島検察審査会宛

  1. オリジナル記事

4.政治資金規正法違反の収支報告書不記載・虚偽記入

(1)政治資金規正法の定め

ア 政治資金規正法は、その第12条第1項において、「政治団体の会計責任者(報告書の記載に係る部分に限り、会計責任者の職務を補佐する者を含む。)は、毎年12月31日現在で、当該政治団体に係るその年における収入、支出その他の事項・・・を記載した報告書」(いわゆる収支報告書)を、都道府県の選挙管理委員会又は総務大臣に提出しなければならないと定めています。

イ 特に、同条同項は、収入のうち、

「機関紙誌の発行その他の事業による収入」については、「その事業の種類及び当該種類ごとの金額」(第1号ホ)を、

また、「機関紙誌の発行その他の事業による収入のうち、特定パーティー(政治資金パーティーのうち、当該政治資金パーティーの対価に係る収入の金額が千万円以上であるものをいう。……。)又は特定パーティーになると見込まれる政治資金パーティーの対価に係る収入がある場合」には、「これらのパーティーごとに、その名称、開催年月日、開催場所及び対価に係る収入の金額並びに対価の支払をした者の数」(第1号ヘ)を、

それぞれ収支報告書の収入欄に記載することを義務づけています。

さらに、政治資金規正法第12条第1項は、「同一の者からの寄附で、その金額の合計額が年間五万円を超えるもの」については、「その寄附をした者の氏名、住所及び職業、当該寄附の金額及び年月日」(第1号ロ)を、収支報告書の収入欄に記載することを義務づけている。

一方、「すべての支出」について同条同項は「その総額」のほか「一件当たりの金額(数回にわたつてされたときは、その合計金額)が5万円以上」の支出について、「その支出を受けた者の氏名及び住所並びに当該支出の目的、金額及び年月日」(第2号)を収支報告書に記載するよう義務づけています。

ウ そして同法第25条第1項は、「第12条……に違反して第12条第1項……の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に記載すべき事項の記載をしなかつた者」(第2号)、あるいはまた「第12条第1項……の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に虚偽の記入をした者」(第3号)につき「5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金に処する。」と定めています。

エ 不記載罪や虚偽記入罪につき故意が認められなくても、同法は、その第27条第2項において、「重大な過失により、……第25条第1項の罪を犯した者も、これを処罰するものとする。」とも定めています。

(2)「岸田文雄後援会」の収支報告書不記載・虚偽記入

ア 「岸田文雄後援会」の2022年分収支報告書は、2023年5月29日県選管に提出されました。

イ 前述したように、202年6月12日(日)午後1時から「リーガロイヤルホテル広島」の「ロイヤルホール」「クリスタルホール」で「祝う会」を開催した真の主催者は、「岸田文雄後援会」であり、「祝う会」は「岸田文雄後援会」の主催する政治資金パーティーでした。

「祝う会」では、参加者1人あたり1万円の会費を約1100名から徴収して計1100万円(推定)の収入を得て、かつ、その経費として少なくとも340万円(推定)の支出を行ない、また、「祝う会」の収益760万円の一部である321万5167円を2022年9月12日に「県第一選挙区支部」に対し寄附金として支出しました。

したがって、「祝う会」は政治資金規正法上の「特定パーティー」だった。

 しかし、「岸田文雄後援会」は「祝う会」の主催者を「合同任意団体」だったと偽装したので、「岸田文雄後援会」の2022年分収支報告書を作成する際に、

上記「祝う会」収入額1100万円、上記「祝う会」支出額340万円、上記321万5167円寄附金支出を、収入欄と支出欄にそれぞれ一切記載しませんでしたし、

かつ、「本年の収入額」「収入総額」「支出総額」につき上記の分だけそれぞれ過少に虚偽記入したのです。

これは、政治資金規正法第25条第1項第2号・第3号に違反する収支報告書不記載罪・虚偽記入罪に該当します。

 この違法行為は、事務方だけの独断で行えるものではないでしょう。「岸田文雄後援会」の事実上の代表である被疑者岸田文雄が、同名目上の代表者である被疑者P、同会計責任者である被疑者Q、当事務担当者であるR(故人)及び同事務職員であるX(氏名不詳)と共謀して行なったものに違いありません。

 もしも上記収支報告書不記載罪・虚偽記入罪につき、被疑者ら全員またはそのいずれかの故意が認定できなかったとしても、当該被疑者は、重大な過失により行なったものであり、政治資金規正法第27条2項違反に該当することになります。

(3)「県第一選挙区支部」の収支報告書虚偽記入

ア 「県第一選挙区支部」の2022年分収支報告書は、2023年5月29日県選管に提出されました。

イ 同収支報告書によると、2022年9月12日に受領した321万5167円の寄附者は「合同任意団体」であったと記載されていました。

ウ しかし、前述したように、上記321万5167円の寄附者は「岸田文雄後援会」でした。

したがって、上記321万5167円の寄附者は「合同任意団体」であったと記載されていたのは、政治資金規正法第25条第1項第3号に違反する収支報告書虚偽記入罪に該当することになります。

 この違法行為は、事務方の独断で行えるものではなく、「県第一選挙区支部」の代表である被疑者岸田文雄が、同会計責任者兼事務担当者である被疑者Qと共謀した結果であったに違いありません。

オ もしも上記収支報告書虚偽記入罪につき、被疑者ら全員またはそのいずれかの故意が認定できなかったとしても、当該被疑者は、重大な過失により行なったものであり、政治資金規正法第27条2項違反に該当することになります。

5.被疑事実3(「祝う会」の主催者が「合同任意団体」の場合)に関する政治資金規正法の定め

ア 前述したように、政治資金規正法第8条の2によると、「政治資金パーティー」は「政治団体によつて開催されるようにしなければならない。」と定めるとともに、「政治資金パーティー」については、「対価を徴収して行われる催物で、当該催物の対価に係る収入の金額から当該催物に要する経費の金額を差し引いた残額を当該催物を開催した者又はその者以外の者の政治活動(選挙運動を含む。これらの者が政治団体である場合には、その活動)に関し支出することとされているもの」をいう、と定義しています。

この定義によると、「政治資金パーティー」とは、まず、「対価を徴収して行われる催物」であることが前提になっています。

そのうえで、「当該催物の対価に係る収入の金額から当該催物に要する経費の金額を差し引いた残額」が生じる催物を「政治資金パーティー」と定義しています。

 また、政治資金規正法第12条第1項第1号ヘは、「特定パーティー」について、「政治資金パーティーのうち、当該政治資金パーティーの対価に係る収入の金額が千万円以上であるもの」をいうと定義しています。

 政治資金規正法は、その第22条の8第2項において、政治資金パーティーの対価の支払者に対し、対価の支払が政治資金パーティーの対価の支払である旨を書面で告知するよう主催者に義務づけ、

また、同法第18条の2第1項は、「政治団体以外の者が特定パーティーになると見込まれる政治資金パーティーを開催する場合」には、「当該政治団体以外の者」は「当該政治資金パーティーを開催しようとする時から政治団体とみなして、この章(……)の規定(これに係る罰則を含む。)を適用する」とし、「政治団体以外の者が開催する政治資金パーティーが特定パーティーになつたときも、同様とする」と定めているので、「政治団体以外の者」は総務大臣又は都道府県選管に政治団体の届出をし、同条第2項により「特定パーティー」について、その終了後3カ月以内に収支報告書を作成して総務大臣又は都道府県選管に提出することが義務づけられています。

エ そして同法第25条第1項は、「第12条……の規定に違反して報告書又はこれに併せて提出すべき書面の提出をしなかつた者」(第1号)につき「5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金に処する。」と定めています。

オ 収支報告書不提出罪につき故意が認められなくても、同法は、その第27条第2項において、「重大な過失により、……第25条第1項の罪を犯した者も、これを処罰するものとする。」とも定めています。

(2)「合同任意団体」の事実上の発起人

 「祝う会」の主催が「合同任意団体」(広島市西区商工センター1-14-1)であった場合でも、前掲の報道によると、「広島県知事、広島商工会議所会頭など地元政財界の有力者11人」の「発起人」のうち、その代表であり「岸田文雄後援会」代表である被疑者Pを除く10人は名ばかりの「発起人」でした。

イ 「祝う会」の事実上の「発起人」は、その代表者である被疑者Pのほか、「県第一選挙区支部」の会計責任者兼「岸田文雄後援会」会計責任者である被疑者Q、「岸田文雄後援会」事務担当者であるR、同職員である被疑者X(氏名不詳)、以上の被疑者を指揮・監督する立場にある被疑者岸田文雄でした。

(3)政治資金規正法の告知義務違反

ア 「合同任意団体」は、2022年6月12日(日)午後1時から「リーガロイヤルホテル広島」(広島市中区基町6-78)「ロイヤルホール」「クリスタルホール」で「祝う会」を開催しました。

 前述した「祝う会」の案内状によると、飲食のない「祝う会」の会費は1人1万円だったから、「祝う会」は、「対価を徴収して行われる催物」で、かつ、「当該催物の対価に係る収入の金額から当該催物に要する経費の金額を差し引いた残額」が生じる催物でした。

したがって、「祝う会」は、計画段階から、明らかに「政治資金パーティー」でした。

 しかし、「合同任意団体」は、その案内状を見ても、「祝う会」の対価の支払いが政治資金規正法上の政治資金パーティーの対価の支払いである旨、案内状に一切告知してはいなかったのです。

したがって、明らかに政治資金規正法第22条の8第2項の前記告知義務違反であり、同法第26条の3第4号違反です

 この違法行為は、事務方だけの独断では行えないでしょう。

「祝う会」の事実上の「発起人」の代表者であった被疑者岸田文雄が、その名目上の代表者である被疑者P、「県第一選挙区支部」の会計責任者兼「岸田文雄後援会」会計責任者である被疑者Q、「岸田文雄後援会」事務担当者であるR、同職員である被疑者X(氏名不詳)と共謀して強行されたものであるとしか考えられません。

(4)政治資金規正法の収支報告書提出義務違反

 「合同任意団体」は、「祝う会」において参加者1人あたり1万円の会費を、前述したように少なくとも約1100名から徴収して計1100万円(推定)の収入があった。したがって、「祝う会」は「特定パーティー」でした。

 「祝う会」の経費は、前述したように、少なくとも340万円(推定)でしたから、「合同任意団体」は、少なくとも340万円の支出をしていたと推定されます。

また、「県第一選挙区支部」の2022年分収支報告書によると、「県第一選挙区支部」は、「合同任意団体」から2022年9月12日に321万5167円の寄附金を受領していたので、「祝う会」の収益760万円の一部である321万5167円を2022年9月12日に「県第一選挙区支部」に対し寄附金として支出していたわけです。

 報道によると、「発起人」は「広島県知事、広島商工会議所会頭など地元政財界の有力者11人」で、「この団体は法務局に法人登記されておらず、総務省や広島県選挙管理委員会に政治団体としての届け出もなされていない。首相就任パーティー開催のために作られた任意団体ということになる」ということでした(「岸田文雄首相の『違法パ―ティー』収入は322万円!」週刊ポスト2024年2月2日号20頁、22頁)。

したがって、「合同任意団体」は、総務大臣にも県選管にも政治団体の届出を行わず、上記計1100万円(推定)の収入、上記340万円(推定)の支出、上記321万5167円の寄附支出を記載した収支報告書を作成・提出しなかったのです。

これは、政治資金規正法第25条第1項第1号違反に該当します。

 このような違法行為は、独りで行うことは不可能です。「合同任意団体」の事実上の代表である被疑者岸田文雄は、同名目上の代表者である被疑者P、被疑者Q、R(故人)及び「岸田後援会」の事務職員であるX(氏名不詳)と共謀して行なったものであるに違いありません。

 政治資金規正法第25条第1項第1号違反につき被疑者ら全員またはそのいずれかの故意が認定できなかったとしても、当該被疑者は、重大な過失により行なったものであり、政治資金規正法第27条2項違反に該当することになります。

第10 「起訴相当」議決をしてください

 「祝う会」の主催者は「岸田文雄後援会」または「合同任意団体」のいずれかであり、そのいずれであっても、「祝う会」は政治資金規正法上の政治資金パーティーであり、その対価の支払いが政治資金パーティーの対価の支払いである旨の告知をしていなかったので、政治資金規正法の告知義務違反は明らかです。この1点だけでも政治資金規正法違反は否定できない事実です。

被疑者らは、広島地検の捜査に対し、「死人に口なし」だとしてすべてR(故人)の単独犯にして責任逃れの弁明をしているかもしれませんが、政治資金パーティーは決して独りでは開催できません。前述した報道で紹介されていたように被疑者ら岸田事務所全体で「祝う会」を開催していたのです。「祝う会」で挨拶した被疑者岸田文雄の意向又は同意なしには開催そのものも開催延期を含めた日程調整もできません。

 「祝う会」の主催者が「岸田文雄後援会」または「合同任意団体」のいずれかであっても、政治資金規正法の告知義務違反になるにもかかわらず、広島地検は、被疑者全員を不起訴にしただけではなく、不起訴理由に「起訴猶予」さえありませんでした。

審査申立人が広島地検に告発状を郵送したのは今年2月29日であり、

広島地検が不起訴処分を下したのは8月9日でした。

つまり、広島地検が告発から5カ月程度で不起訴処分にしたのは、あまりにも早すぎる処分であり、明らかに捜査は尽くされていないと言っても過言ではありません。そのことは、「起訴猶予」さえなかったことが証明しています。

被疑者岸田文雄は、8月14日に今年9月に予定されている自由民主党総裁選挙に出馬しないことを表明しましたが、広島地検がその前の同月9日に捜査を尽くさないまま不起訴処分にしたのは、被疑者岸田文雄の出馬に不利にならないよう広島地検が忖度した結果ではないかとの疑念さえ生じます

 「祝う会」の収益760万円の一部である321万5167円は「県第一選挙区支部」に対し寄付金として供与されましたが、その残金約438・5万円は裏金として何に支出されたのか、不明のままです。広島地検が捜査を尽くさないまま不起訴処分にしたのは、この点でも明らかに不当です。

 審査申立人が東京地検に刑事告発した自民党の派閥の政治団体(細田・安倍派「清和政策研究会」、二階派「志帥会」など)が長年裏金をつくり続けたこと事件が教示しているように裏金事件が悪質な事件であることは明白です。

もしも、このまま起訴されなければ、同じ手口で裏金はつくり続けられることでしょう。

エ そもそも検察審査会は、公訴権を検察官が独占している中で「公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図るため」に存在しています(検察審査会法第1条第1項)。

貴検察審査会にはその存在意義を是非とも発揮していただきたい。本件事件の悪質性を踏まえれば、政治資金規正法違反は明白なのですから、(11名中8名以上による)「起訴を相当とする」と議決していただきたいのです

オ 被疑者岸田文雄は自由民主党総裁選挙に出馬しないことを表明しましたから、広島地検はもう忖度する必要はありませんので、貴検察審査会が「起訴相当」議決をすれば、広島地は必ず捜査を尽くして被疑者らを起訴するでしょう。

何故なら、検察審査会が「起訴相当」議決をした後に検察が再び不起訴にしても検察審査会が再び「起訴相当」議決(2度目の「起訴相当」議決)をすれば、裁判所が検察官役の弁護士を指定してその指定弁護士が被疑者らを起訴することになり(検察審査会法第7章)、

指定弁護士は検察官の捜査資料を見ることになり、検察がどのような捜査をしたのかバレてしまいますので、

それを回避するために、検察は、1回目の「起訴相当」議決後に捜査を本格化させて捜査を尽くし起訴する方針に変わるからです。

カ 貴検察審査会におかれましては、安心して「起訴相当」議決を行なってください。所得を隠さず、きちんと確定申告して納税している国民の多くが貴検察審査会の英断を期待していることでしょう。

 

証拠目録(=添付書類 各1部)

1.審査申立人の2024年2月29日付告発状

2.2024年(令和6年)8月9日付「処分通知書」

3.2024年(令和6年)8月16日付「不起訴処分理由告知書」

 前記以外の証拠については、2024年2月29日付告発状と共に広島地方検察庁に送付しましたので、同地検が保有しているはずですから、同地検から送付を受けて御確認いただければ幸いです。なお、審査申立人が間違いなく告発人であったことを証するために「告発状」だけはこの審査申立書に添付いたします。

以上。

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鈴木祐太
 

ジャーナリスト。

地方の理系大学に在学中から、被差別部落・ベトナム難民などの在日外国人の子どもたちへの支援に関わる。

小学校臨時教員、派遣社員などを経て、ネットを中心としたメディアに関わり、「政治とカネ」「子どもの貧困」などの社会問題を中心に記事を発表してい...

 
 
   
 

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