◆「ネタ元不在」の調査報道
お配りした資料の最後に「高知工科大含み損1.4億円」という見出しの記事があります。
最近は、国公立大学だけじゃなく私立であっても、大学のホームページなどを見ていると、「情報公開」があります。そこをクリックしていくと、学校法人の役員とか、いろんなものが出てきます。その中に「決算報告」というのが入っています。その決算報告をクリックしてみていくと、年度ごとの決算書が出てきます。
高知工科大の場合は、過去5年だったかな、ホームページ上で公表されています。その公表されている決算のバランスシート、損益計算書ではなくて貸借対照表のほうですが、それを年度ごとに5枚並べてみていると、大きく変動している項目がありました。細かいので、説明は省きますけれども、資産が妙に変動していることがわかった。一体これは何だろうと思って、ずうっと決算書の附属明細書などを見ていくと、元本保証のない金融商品を多額に買っているということがわかってきました。何枚か並べて経年変化を追っているだけです。銘柄も附属明細書に出てくる。後は、証券会社に照会して、価格の変動とか取引条件とか聞いて、それでこの時点で含み損が1.4億円あると分かった。国公立大学なのに、これでいいのか、という記事として書きました。
これは記事になった後、大学関係者から「共産党から情報が行ったのか」みたいなことを言われました。実際は単純に決算書を並べただけです。つまり公開資料だけで分かることもある、という実例です。そのためには、ちゃんと決算書を読み込む一定程度の力は必要です。私はバランスシートを読めるようになろうと、30歳になったなかりの頃、ずいぶん勉強しました。簿記の本も買い込んで。それが生きたわけです。
=つづく(第4回は2月3日公開予定)
■連載「権力監視型の調査報道とは」
<第1回>調査報道は端緒がすべて それを実例から見る 」
<第2回>まず記録の入手を 誰がその重要資料を持っているのか? 」
■参考
単行本『権力vs.調査報道』(高田昌幸・小黒純著、旬報社)
単行本『権力に迫る「調査報道」』(高田昌幸・大西祐資・松島佳子著、旬報社)