調査報道は端緒がすべて それを実例から見る 「権力監視型の調査報道とは」【1】

  1. How To 調査報道

◆調査報道は「端緒がすべて」

 ここからが本題です。

 調査報道、つまり権力監視はどうやればできるのか。統一的なノウハウはありませんけれども、一定の類型、一定のパターン、一定のやり方はあるだろうと。それが30年近くの記者生活の結論です。

 「調査報道で一番大事なことは何ですか」という質問をよく受けます。答えは「調査報道は端緒が全て」です。当たり前ですけれども、取材は全て、何かのきっかけがあってスタートします。取材して、記事を書く。取材を重ねて、裏をとって記事を書く。一般の取材でも、取材はきっかけが全てです。調査報道も同じです。何か世の中でおかしいことが起きている、何か外務省で、財務省で変なことが起きている、その端緒をどうやってつかむか。それが全てだと思います。これができるかできないかが、決定的な分かれ道です。権力監視の報道ができるためには、端緒をどうつかむか、だけです。

◆端緒のつかみ方、いくつかの基本

 では、端緒のつかみ方には、どういうものがあるか。

 一番大事なのは「日常の取材先から、記者個人が『内部告発先』として認識してもらう」ことです。そのために普段、記者クラブを拠点に建物の中に縦横に入り込んでいるわけです。ここにいる記者のみなさんも、ふだん、いろんな場所をベースに取材をしていると思います。そういう日常の取材先から「この記者であれば、この情報は伝えても大丈夫だろう」「どうしても外に訴え出たい内容がある。この記者にだったら言っても大丈夫」、そういうふうに思ってもらえるかどうか。つまり、「内部告発を行う相手としてこの記者は適切である」と思ってもらえるかどうか。それが最初のポイントだと思います。

 デジタル技術の進展により、暗号化されたメールの送受信も可能になりました。特別の機能やアプリを使って内部告発のメールを送ることができます。テクノロジーがさらに発達すれば、完全に自分の身元を秘す形でできるでしょう。あるいは、今でもそうであるように、手紙や電話でも一定程度は身分を隠して内部告発はできると思います。

 しかし、これは、ひたすら内部告発を座って待っている状態ですね。言葉はヘンですけれども、内部告発はその記者1人ひとりが誘い込むことができます。そして、私の経験上、重要な内部告発は、本当に大事な内部告発は、1対1の関係で行われる。1対1の関係というのは、日常的につき合っているAさん、Bさん、社長さん、部長さん、そういう人のことを言っています。

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高田昌幸
 

ジャーナリスト、東京都市大学メディア情報学部教授(調査報道論)。

1960年生まれ。北海道新聞、高知新聞で記者を通算30年。北海道新聞時代の2004年、北海道警察の裏金問題取材で取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞などを受賞。

 
 
   
 

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