調査報道は端緒がすべて それを実例から見る 「権力監視型の調査報道とは」【1】

  1. How To 調査報道

◆「クリーンな人」以外とも付き合ったほうがいい

 端緒をどうつかむか。その2番目は「素性が悪いと思われがちな人とも意識して付き合う」です。皆さん、ふだん取材先ではいろんな方とお付き合いしていると思います。その中で、本当に権力の中枢に入って何かをひっくり返すような調査報道、その端緒をどこでつかむかということで言えば、この2番目、「素性が悪いと一般的に言われる人とどう付き合うか」も大きなポイントだと思います。

 日常的な取材は通常、いわばクリーンな人とのお付き合いでしょう? 身分のはっきりしている、官僚とか、市長さんとか、何とか財団の理事さんとか、非常にきれいな方とお付き合いすることが多いと思います。しかし、そういうところからは、なかなか本当の端緒というのはつかめないんじゃないか。

 街金業者と付き合ったことがある人、いますか。あと、手形のパクリ屋みたいな人とか。ああいうところはものすごく情報が早い。どこかの企業が潰れかけているとか、どこかの政治家に変な金が渡されたとか。何か裂け目があると、すぐそこに手を突っ込んでいって金をむしりとろうとしているような人たちなわけです。アングラ経済人みたいな。

 そういう人たちの輪の中に入る。そういうところによく警察の二課の人とかいるわけです。ああ、二課もそういうところからも情報をとろうとしているんだな、というのがまた見えてくる。

 あと、情報誌の世界。有名だった「現代産業情報」、あれは後に「アングラ」とは言えないぐらいメジャーになっていたと思いますけれども、いわゆるアングラ系の情報誌とか、一昔前で言うと、総会屋系の情報誌、そこに書いている人たち。とにかくそういう人と付き合う。

◆「元幹部」「元議員」「元社長」…「元」が役立つ

 それから「二課のネタ元」、贈収賄事件を扱う捜査二課と同じことをしても、僕らは仕方ない。だから、二課がどこから情報をとっているかを探って、そこに当たる。あるいは、民間の信用調査機関、帝国データバンクとか、東京商工リサーチとか、あの人たちはどこから情報をとっているのかを考えて、そこにこっちが情報をとりに行く。データバンクの情報員から情報を間接的に得るのではなく、こっちが彼らの情報源を見つけ、直接そこへアクセスしにいく。そこを大事にする。

 「元職」もすごく役に立つと思います。例えば、政治家の元秘書とか、あるいは企業の元役員とか、原発の関係でいえば電力会社の元役員とか。元職とふだんから交流しておく。元政治家でもいいです、元市長でもいいです。「元」が大事です。現職ばっかり行かない、これをぜひお勧めしたいと思います。

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高田昌幸
 

ジャーナリスト、東京都市大学メディア情報学部教授(調査報道論)。

1960年生まれ。北海道新聞、高知新聞で記者を通算30年。北海道新聞時代の2004年、北海道警察の裏金問題取材で取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞などを受賞。

 
 
   
 

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