◆単なる質問ではなく、「反問」こそが重要
4番目のポイントは「日常取材の中での『反問』『疑問』」です。とくに若い記者の方にはぜひこれは言いたかった。
日常の取材の中で、例えば記者会見やレクの場で、多くの人は、質問はしています。ただし、単なる質問が多い。漢字はどう書くんですかとか、その被疑者の生年月日はとか。本当に必要なのは単なる質問ではなく、反問です。疑問です。疑問に思ったことを必ず問うていく。
「おかしいじゃないですか」と。「あなたの言っていることは法律に書いてないじゃないですか」と。「それは法律に書いてあるんですか、規則に書いてあるんですか、それともあなたの裁量で言っているんですか、裁量だったら、誰が判断しているんですか」と。もう徹底的にやっていくんです。
◆記者会見は真剣勝負の場
そういうことが多分、一歩一歩、記者が取材相手に対して、特に権力機構に対して前に出るということです。それをやめて、ただの通り一遍の質問を繰り返すだけになると、記者会見とかレクの場はものすごくぬるくなります。予定調和の会見やレクなら、意味がない。市民の代理人として質問を発しているとはいえない。記者会見は真剣勝負の場です、本来は。
相手が立ち往生して言葉に詰まるところをみんな見たくないのかな、と思います。相手が激怒して机をたたく場面を、みんな、見たくないですか? 「誰だ、その質問をしたのは」なんて言わせたいじゃないですか。
そういう質問をその場できちんとできるかどうか、だと思います。名前の解釈、字の解釈とか、そういうものが質問ではないでしょう。少なくとも記者の質問ではないでしょう。なぜ会見でそれをやるか。私見ですが、会見というオープンの場で、厳しい質問を繰り出すことができない記者は、1対1の取材でそれはできません。相手を詰める取材で、厳しいやり取りはできない。なぜなら、そういう実践訓練ができてないからです。会見はいわば、その実践訓練だと思えばいい。
取材先、特に偉い人は時々「君はいい記者だ」と言うじゃないですか。どこかの市長とか、知事とか、言いそうじゃないですか。私も何度か言われたことがありますけれども、権力者に「君が一番いい記者だ」なんて言われたら、その記者は自分の記者人生を振り返ったほうがいい。権力者に褒められるとは、どういうことなのか、と。「二度とおまえには会いたくないけど、おまえには会わざるを得ない。おまえの取材には応じざるを得ない」と、そういう関係をどうつくるか。ふだんから、そういうところが大事なんだろうと思っています。